あなたの幸せは、本物ですか?【春にして君を離れ】あらすじと感想

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今回ご紹介するのはアガサ・クリスティーの「春にして君を離れ」

この記事の前半では「春にして君を離れ」の概要とネタバレなしのあらすじ、感想。後半ではネタバレありの感想を書いていきます。

ジャンルは、ロマンチック・サスペンスになるそうです。私にはある意味でホラーでした。

ゆり

ネタバレ嫌な人は前半だけ読んでね!

この記事を書いた人
ゆり

2児の母(1歳と0歳)
出不精インドア派で映画鑑賞と読書が好き
育児に追われて映画観れなくて悲しくなる
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詳細

作者アガサ・クリスティー
発売日1944年8月
読める媒体書籍 Audible
Audible朗読田島 令子
映像化等日本|舞台化
引用元:Wikipedia
ゆり

今回私はAudibleで聴きました!

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ネタバレなし感想

1944年の小説なので、とても古いです。ミステリー小説で有名なアガサ・クリスティーの作品。コナンくんの阿笠博士の名前は、アガサ・クリスティーの名前からいただいたみたいですね!

古さは全く気にならなかったです!時代背景も1930年代だというだけ。本っていいですね、映像作品だと良くも悪くもレトロ感いなめませんもんね。

ミステリー小説を読んでいると、本格ミステリーで有名な作家さんの名前や代表作のことをよく聞くので、元ネタがわかっているほうが楽しめるんだろうな〜と思い、アガサ・クリスティーの世界へ。

「そして誰もいなくなった」の次に聴いたのがこちらの「春にして君を離れ」でした。

ゆり

心にグサリ過ぎて、まだ余韻がすごい、グサッと刺さった何かはきっと向こう数年抜けないのでは…

\あらすじ

1930年代。地方弁護士の夫との間に1男2女に恵まれ、よき妻・よき母であると自負し満足している主人公ジョーン・スカダモアは、結婚してバグダッドにいる末娘(次女)の急病を見舞った帰りの一人旅の途上にある。

荒天が一帯を襲い、交通網は寸断される。列車の来るあてのないまま、砂漠のただなかにあるトルコ国境の駅の鉄道宿泊所(レストハウス)に、旅行者としてはただ一人幾日もとどまることを余儀なくされる。何もすることがなくなった彼女は、自分の来し方を回想する。やがて彼女は、自分の家族や人生についての自分の認識に疑念を抱き、今まで気づかなかった真実に気づく。

引用元:Wikipedia

視点はほぼず〜っと主人公のジョーン視点で進みます。最後にちょびっとだけ夫のロドニー視点。

視点がジョーンというより、ほぼ全部がジョーンの頭の中だけ、過去の回想だけで展開します。それなのに、続きが気になって気になって止まらなかった。

あのとき、あぁなって、こうなって、そしてこうで…あれ、どうしてこうなったんだっけ…あぁ、〇〇だったからだ!ん?でもどうしてそうだったんだろう…。

みたいな感じで、頭の中に浮かんできたことを考えながら、ジョーンの気になる話に行ったり来たり。

ただ長時間歩き続けるときって、自然と考え事をして「なんでこんなこと考えてるんだろ」ってなったり、考え事がまとまったりしますよね。

謎に昔のことを思い出して浸っていたり。考え事をしたくて一人で登山をするって人もいるそうです。(湊かなえさんの山女日記で読んだ。)

ゆり

私もよく、考え事をしたいときは長時間のお散歩をすることがあります。普段は地下鉄に乗って帰宅する道を、家まで歩いてみたりとか。それの究極形だな〜と思いました。

ジョーンの思考に、共感してしまう人って多いんじゃないかと思いました。

私は、共感してしまいました。してしまったんです。したくない、認めたくなかったです。

今こうして書いているうちにも涙が出そう…。ジョーンという主人公の人間性や本質に嫌悪しながらも共感して、そんな自分が居ることに恐ろしくなって、恥ずかしくなりました。

読み終わって、なんとも言えない気持ちになったあと、Audibleのレビューを見ると他にも「共感した」って言ってる人がいて、「自分だけじゃなくて良かった」と謎の安心感をおぼえました。

いつもは心に響いた本があると、主人に感想を話して聞いてもらうのが日課というか、日々の雑談なのですが、この本のことはちょっと話したくなかった。

ある意味でホラーよりも怖ろしくて、あとを引く作品です。共感しちゃった、図星だった人は心にちょっとした傷を負うかも。

今ある幸せや充実感が、消えるかもしれません。

でも、読んで後悔はしていません。私は、この本を通じて得た気づきに向き合おうと思います。

ゆり

そういえば、昨晩は嫌な夢をみました。起きたら泣いてた。今書きながら気がついたけど、この本の影響だったのかも。

今回はAudibleで聴きましたが、朗読がとっても良かったです!!

オーディオブックには朗読者さんに当たりハズレがあると思いますが、今回は大当たり!田島令子さんというかたでした。

感情表現がとっても豊かで、ジョーンの心を声で表してくれました。朗読が素敵だったので没頭できた、ジョーンの心に入り込めたと思います。

一度、書籍で読んだことのある人もぜひAudibleで再読してみて欲しいと思います。

特にこの本は、1度心に残った人は数年ごとに読み返すと捉え方が変わったり、はたまた初読の際に感じたことの振り返りをしたくなる作品だと思います。1度で終わらせるのはもったいない。

ゆり

私がジョーンと同じくらいの年齢なる頃、私の子どもたちが自立する頃には必ず再読したいと思います。

ネタバレあり感想

自分だけ気づいていない、滑稽なジョーン

良き母であるはずのジョーン。徐々に、「子どもたちにあまり好かれていないのでは?」から「めっちゃ嫌われてるやん!」って気づく過程がこわいけど面白かったです。

そして、こんなに子どもたちに嫌われて避けられて、それでも「子どもたちは私を愛している」と信じているジョーンが滑稽。

でも、そんなジョーンが滑稽に見えたのはきっと私にとってまだリアルじゃないからだったんだと思います。

リアルというのは、同じ年頃の子どもが居ないっていうこと。うちの子まだ1歳なので。

子どもと接する間に感じる違和感、

「自分は子どもを愛してる」
(本当に?子どもを愛してる自分を愛してるんじゃなくて?)

「子どもたちは私を愛してる」
(愛されてないことに気づいてるけど、認めたくないだけじゃない?)」

これは想像することしかできない。私は自分の親が好きだし、愛されてる実感もある。だからまだこれは想像するしかできない。

でも、ロドニーについてはリアルでした。夫が居るから。

そして、うちの夫はロドニーよりはちゃんと自己主張するタイプだけど、どっちかと言うと私よりは大人しいというか…。

つまり、ジョーンとロドニーに自分と夫を重ねちゃったんです。そして、私、自分の中にジョーンをたくさん見つけちゃった。

恥ずかしいからあまり書けないけど、なんか、匿名でやってるこのブログにすら書きたくないって思うくらい自分の嫌な部分を見つけて恥じました。

ゆり

認めたくないけど、似てる、って思ってしまうところが多々あったんです。気づいたらどんどん怖くなりました。

そして、流石にこんなに酷くはない、ジョーンほど酷くないし、夫もロドニーよりも自己主張できるタイプだし…って思ったところで、

「私はまだ大丈夫」って思うの自体、ジョーンと同じで自分がヤバいことに気づけてないのでは..?

自分は大丈夫って思っちゃダメなんじゃ…「自分は大丈夫。」の積み重ねが家庭崩壊の一歩目なのでは…?

って、悪循環というかどの方向にも逃げられないような窮屈な感じがしました。

「子どもたちとジョーン」「ロドニーとジョーン」

この作品の怖い部分の、私はまだ半分した体感していないんだなと。

これが、20年後くらいに自分の子どもたちが自立した頃にまた読み返したい理由ですね。安らかな気持ちで読めるように、今からジョーンを反面教師にして家庭と向き合いたいと思います。

ロドニーの優しさと諦め?

ロドニーは、諦めちゃったんでしょうか。

結婚は契約だって言うのは、弁護士のロドニー的思考だな。とは思います。

私は、ジョーンに自分を重ねたからってだけじゃない(たぶん)客観的に考えても、悪かったのはジョーンだけじゃないと思う。

料理人が、「奥様が褒めてくれないのが辛い」って伝えたのに、全然取り合ってくれないシーンがありましたよね。

結局、この人には何を言っても無駄だって諦められちゃった。つまりは見捨てられちゃったわけで、あれは流石にジョーン性格悪くね?と思ったけど、もしかして時代背景もちょっとは影響してるのかしら?

ジョーンには、何を言っても無駄って感じなのかもしれないけど、ロドニーや子どもたちは、強く訴えたり、ジョーンを変えようとしなかったのかな。

日常の中だと、そういう大きな行動に出ようとは思わないもんなのかな…。

でも、やりたい仕事ができなかったから男じゃないとか、抜け殻のようになるとか、どんなにジョーンが察しが悪いというか、自分本意だからどうせ気づかないと思ってたとしても、本人の前で言っちゃうロドニー。

チクチク責めてるよね。違うのかな。仕事に関しては、ジョーンを責めないで自分を責めているんであって欲しい。ロドニーが直接ジョーンが悪いって言ってる描写はなかったと思うから。

弁護士になるべき!って主張するジョーンに、いや!俺は農場を!ってもっともっと訴えるべきだったと思うな…。作中の会話だけだったなら、ロドニー諦め早くない?って思っちゃう。

言えない人もいるよ。って言われたらそこまでかも。そういう人が居るのは理解してるけど、言って欲しいって思うのは私がやっぱジョーン側の思考だからなのか…。

描かれていないところで、もっと訴えたけどそれでもジョーンは聞かなかった。とかならまぁ納得ですけど。

結局、やってても成功できなかったかもって最後に悟ってたけど、できなかったのはジョーンのせい、でも、マジで農場経営はじめて失敗してたらジョーンを押し切ってはじめたロドニーのせいってなるよね。

そうならなくてよかったって心で思いながら、可哀想な自分に浸ってる感を感じてしまった。そしてジョーンを見下す。ずるくないかな。

うーん、ロドニー視点の長編も読みたいです。

ゆり

ジョーンに、真実に気がついて欲しくないって思うロドニーは、ある意味ではジョーンを愛してはいたのかな?そう思っちゃだめですか…?

ジョーンと自分の共通点、家庭崩壊の恐怖

共通点があるな、と思って、こわくなったけど、口コミを読むと他にも居て安心しました。自分本意な考えはやめようと心に刻む。

そういえば、夫と付き合いはじめてすぐの頃

「なんでそんなに優しくしてくれるの?」って聞かれたことがあったんです。私は、

「私がやりたいことをした結果、優しいと思ってもらえただけ、したいことをしてるんだから、自分のためなんだよ、私は私のために優しくしてるの」的なことを返した気がする。

その時は、「優しくしてるのは気を遣ってるからじゃないんだよ」ってことを伝えたかったんだけど、今思い返すと自分勝手な思考だったかな。

あのとき彼はどう感じてたんだろう。

付き合い始めの頃から1〜2年くらいは、喧嘩の多いカップルだったんです。つかみ合いの喧嘩もしたし、物も投げたし、4階の窓からケータイ投げ捨てて壊れたこともあった。笑

でも、婚約した頃くらいからは喧嘩が少ない。

というより、私が機嫌悪くなって爆発することはごくたまにあっても、彼がなだめるのが上手くなったというか、私の扱い方が上手くなったのかと思ってたんだけど、もしかして我慢してるだけ…?

「我慢してるのかな…?でもそうだったらどうしよう…」って心の隅っこにあったんだけど、放置してたんです。

そんな日常のなかで、この本を読んで、不安が浮き彫りになりました。ジョーンも気づいてたんだよね。でも何十年も無視し続けたんだ。

その結果がこれですよね。

ゆり

冒頭で書いた、嫌な夢見たっていうのは、自分が離婚する夢でした…嫌だなー。

家に帰ったときのシーン、ジョーンの「決めなくては、決めなくては、」のところは、頑張れ!言うんだ!あーでも、きっと無理なんだろうなーってドキドキでした。

この作品は、ハッピーエンドは似合わない、これで良かったと思うけど、私は後悔ないように、もうちょっと向き合ってみたいと思います。

映像化について

「春にして君を離れ」は映像化はしておらず、舞台化されていたようです。

タイトルは「SUNDAY」(サンディ)キャッチコピーは「私が終わる、私がはじまる」

主要キャスト

  • ジョーン:高野菜々
  • レスリー:森彩香
  • ブランチ:宮崎祥子
  • ギルビー:井田安寿
  • バーバラ:平田薫
  • エイブラル:北村祥子
  • ゲッコー:広田勇二
  • ロドニー:安中淳也
  • チャールズ:新木啓介
  • ウィリアム:上田亮
  • トニー:大須賀勇登
引用元:Wikipedia

まとめ

「春にして君を離れ」は、家庭を大切に思う女性に強く刺さる作品だと思いました。

今、30代前半で読めてよかった。反面教師にして、ずっと心に大切にします。

いつか読み返したい作品。Audible版は朗読が素晴らしかったです。

作品の良さを1.5倍増しくらいにしてるのでは!?書籍で読んだことのある人も、Audibleで再読おすすめです。

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この記事を書いた人

2児の母(1歳、0歳)もともと映画好き・読書好きで年間200本以上の映画を視聴。読書もそこそこ。
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