今回ご紹介するのは宮部みゆきさんの「火車(かしゃ)」
この記事の前半では「火車」の概要とネタバレなしのあらすじ、感想。後半ではネタバレありの感想と映像化作品のキャスト紹介をしています。
ネタバレ嫌な人は前半だけ読んでね!
詳細
作者 | 宮部みゆき |
---|---|
発売日 | 1998/1/30 |
読める媒体 | 書籍 Audible |
Audible朗読 | 三浦友和 |
映像化 | 日本|2011年 SPドラマ化 韓国|2012年 映画化 |
今回私はAudibleで聴きました!
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ネタバレなし感想
主人公は怪我で休職中の刑事(本間俊介)親戚の男性に頼まれて、失踪した彼の婚約者(関根彰子)を探して欲しいと頼まれる。
親戚の男性(和也)はまだ若い銀行員、プロポーズしたばっかでうきうきの時期なのに婚約者の彰子はどうやら自分の意思で失踪したっぽい…。
とりあえず、親戚のおじさんが刑事だから相談しよ。ってなったようです。
主人公の刑事本間視点で、でも休職中だからあくまで個人が動き回るていで警察手帳は使わずに単独捜査をしていきます。
他の人物視点に切り替わることなく、ずっと本間視点です。
時系列が入れ替わることもないので、一緒に操作している感覚というか、そっと横で見守っている感覚!
この本を選んだきっかけは、単純に私が今宮部みゆきさんブームだから。笑
同じ作家さんの本をローラーで読んでいく習性があります。宮部さんの本は昔、中学生くらいのときに学校の図書室で何冊か読んだ気がするけど、もう何読んだか、内容も覚えてない。
【火車】は今回のブームで読んだ宮部作品、13冊目でした。
刑事ものの作品らしく、徐々に徐々にわかってくる事実が繋がっていく感じが爽快です!
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ネタバレあり感想
- 借金をすることの責任能力について
- 喬子の心境について
- 郁美の友達からの電話
- ラストシーンの没収感
借金をすることの責任能力について
今回のテーマ、タイトルでもある火車はカードローンや住宅ローンで背負った負債で首が回らなくなることですよね。
途中、弁護士先生と本間がうどん屋さんで話すシーンが印象的でした。私も、すごく考えながら読んだから。
でも、なんだか申し訳ないけど、あのシーンで弁護士さんが言ってたことには100%同意できないな。というのが正直な感想です。
本間が「図星だ」って思ったように、私も、時代のせいだとか国のせいだとか企業のせいだとか、そういうのがあったとしても、やっぱり本人がやったんじゃん。って思ってしまった。
だけどこれも、時代なんですかね。私が生きてきた今は情報が多いから。
高校生の頃からスマホ持ってて、なんでも検索すれば調べられて、だから騙されること少ないし、この火車の時代にみんなが関根彰子みたいにやられたからカードの総量規制とかもできて、守られるようになったから。
私にとってはこの時代が当たり前だから、頑張って想像しても数千万円の借金作るまで浪費する自分が想像できませんでした。
自分は大丈夫なはず!!って思いたい心理も働いてるのかな?
だから、関根彰子に関してはちょっと入り込めなかった。でも新城喬子の境遇は可愛そう、何も言えねーってなりました。
自分がやらかしたか、親がやらかして自分は悪くないってところが大きく違いますよね。
自分が悪いの度合いや状況も、日々の贅沢のためにやっちゃったのと、マイホームのローンだと話が違うって感じるなぁ。
日々のちょこちょこ買いの積み重ねは「もう払えないから止めなきゃヤバい!!」ってタイミングがあるけど、住宅ローンは一発だから。
知識が足りないにしても一回の失敗で生活しながらお金が足りなくなって…って、こっちのほうが首が回らなくなる危険性高い気がしてます。
時代は変わってるから、この作品の人たちみたいな状況には陥りにくい仕組みになってるけど、その変化に合わせて違う問題もでてくるのかもね。
変化に対応できるように計画的に、お金で大きな失敗はしないように気をつけようと思いました。
喬子の心境について
元旦那の倉田が、もう無理だって悟った図書館でのシーン。「自分の親の死を願ってページをめくる喬子を、浅ましいと思ってしまった。」
これがなんとも言えない気持ちになって辛かったです。
本間の言う通り、何不自由なく育ってきた倉田の家庭環境と価値観から、喬子がそう見えてしまったのは仕方ないことだと私も思う。
でも喬子本人はやっぱり悪くないし、逃げるのも難しいんだし、これから幸せになれるってときなんだから必死になってしまうと思う。
この後の、関根彰子の母親が死んだことを新聞をみて知ったときの心境だとか、木村こずえのお姉さんが亡くなったのを知ったときの心境とか。
本当は優しいというか、人の命を重んじる節のある喬子の心がどんなだったかは考えると辛いなと思った。
これはちょっと宮部節かなと。こういうイヤミスチックな感じを欲して宮部作品を読んでる感じはある。
郁美の友達からの電話
これはちょっとおまけというか、少しクスっと笑ったシーンでした。
自分よりも不幸せであろう友人に電話かけて、散々自慢話してマウント取ろうとするけど返り討ちに合うみたいな。
これ、時代に関係なく女同士いつだってやってます。私も最近実感する。なんか、こういう考え方とかマウント合戦に参加したくないって思ってるけど、巻き込まれると勝ちたくなってしまうのが性というか。
- 仕事が上手くいってる、充実してる、社会的地位がある
- お金がある、贅沢してる、苦労していない
- 結婚した、子どもができた、幸せを感じている
3つとも誰もが自慢したくなるポイントだけど、なんだかんだで①②でマウントされても③が全開の人が圧倒的勝者感あるんですよね。
独身で地位があってもお金があっても、結婚は?子どもは?ってキラキラの専業主婦に聞かれるだけでギクッてなるみたいな。
この溝がね、マウント合戦なんてしたくなくても、結婚して子どもができると日常のことを話すだけでマウントだって受け取られかねないから、変に気つかっちゃう。
独身側も、あまりキラキラ見せつけられたくないし、なんか話し合わない気がするしって。
不妊で悩んでる人と子育てしてる人は混ぜるな危険だしね。お互い微妙な思いしかしない。
だから今まで疎遠だったのに子どもがきっかけでまた仲良くなった友達が居たり、独身同士仲良くしてた友達と遊びにくくなったり。さみしいな…。
人生のステージが変わると友達も変わる。郁美の話は32歳で2児の母やってる私にとって、凄くリアルでした。
ラストシーンの没収感
ラストシーンですが、良い感じに裏切られたというか、置き去りにされたというか。目の前でご飯の準備してたのに私にはくれないの?みたいな気持ちになりました。
「よしよし、ついに本人ご登場だぞ〜!」って思いながら聴いていたので、「新城喬子、その肩に今、保が手を置く」で終わった瞬間ポカーン。
声出してズッコケた、花葬のhydeみたいに「なっは〜ん!」って言ってからの「まじかよ、ここでおわり!?」って騒いでしまった。
ワクテカして待ってたのに…!!
でもこれも宮部節か!?他の作品でもこんな気持になったのありました!ネタバレするから言わないけど!
今回は本じゃなくてAudibleで聴いてたから味わえた感覚です。本なら、残りのページ数が見えるけど、Audibleは意識して時間数をみていないとおわりまでどのくらいかわからないから。
今回は全く時間意識しないで聴いてました。
映像化について
いつもキャストの予想してから正解をみて楽しむんですが、今回は先にちらっとみちゃってたんですよね。佐々木希だけ。だから、新城喬子だけは佐々木希で脳内再生してました。
日本版 主要キャスト
本間俊介役
上川隆也
関根 彰子役
田畑智子
新城 喬子役
佐々木希
栗坂 和也役
渡辺大
本多保役
ゴリ
碇貞夫役
寺脇康文
新城喬子が美人だ、スタイルがいいって描写は散々でてきたので、佐々木希ぴったり!昭和バブルの佐々木希かわいい!!
事実に基づく部分
作中にでてくる溝口弁護士は、実在の弁護士さんがモデルになっているそうです。取材の中ででてきた言葉をそのままつかったセリフもあるのだとか。
まだ宮部さんのデビューから日が浅い時期の作品で、自分が作家として生活していけるか不安だったこともあり、身近な恐怖である個人の破産をテーマにしたそうです。
宮部みゆきさんは過去に法律事務所の事務員として働いていた経験があるそう。なので法律関係に詳しいのかな?といった感じがにじみ出ています。
他の作品でもそう感じる描写が多いです!
まとめ
手軽にミステリーを読みたい人におすすめです!今作は2人の女性の生き方というか、人生観みたいなものが大事な視点になってくるので、女性目線、かなり楽しめました。そして怖いとも感じた。
男性が読むとどうなのかな?主人公の刑事は男性だし、魅力的な女性(新城喬子)を取り巻く男性たちの気持ちは、私よりも男性が読んだほうが理解できるんだろうか。
男性視点で佐々木希級の美女が相手なら俺もこうなっちゃうな〜なんて読み方ができたらそれも楽しそうかも。
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