今回ご紹介するのは我孫子武丸さんの「殺戮にいたる病」
この記事の前半では「殺戮にいたる病」の概要とネタバレなしのあらすじ、感想。後半ではネタバレありの感想を書いています。
ネタバレ嫌な人は前半だけ読んでね!
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詳細
作者 | 我孫子武丸 |
---|---|
発売日 | 1992年 |
読める媒体 | 書籍 |
Audible朗読 | ‐ |
映像化等 | ‐ |
受賞歴 | 1993年 このミス16位 |
作者の我孫子武丸さんはゲーム「かまいたちの夜」のシナリオを担当したとして有名なかたです!
今回ご紹介する「殺戮にいたる病」は、ひろゆきも大絶賛の作品です!
僕がこの本を勧めた人で、読み返さなかった人は居ない100%みんな2周以上読む!読まなかった人いたら教えてください〜!
って言ってました!笑
私も実際、途中で一度ざっと読み返し、最後まで読み、そしてまた最初から読んじゃいました!
今回はKindle版を購入して読みました!
ネタバレなし感想
あらすじ
永遠の愛をつかみたいと男は願った――東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔! くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。
引用元:Amazon
叙述トラックのどんでん返しが爽快。騙されたい、けど騙されないぞ〜!っと意気込んで読んでも完璧に騙されました。
読んだきっかけは、おすすめの本を紹介してくれるYouTubeチャンネルで紹介されていて興味を持ったからですね。
どんでん返しが読みたい気分だったのと、結構グロい…と言われていたので、たまにはそういうのもいいな。と思って選びました!
ページ数が少ないので、サクサク読めます。私はちょうどゴールデンウィークでお休みだった期間に1日半くらいで読みました。
印象的だったは、まずエピローグから書かれていたこと。
※エピローグを読んでもネタバレにはなりません。
- 蒲生稔(犯人)は逮捕のとき抵抗しなかった
- 雅子は泣き叫んでいた
- その場に稔が殺した死体があった
- 樋口は稔の犯行を見た
- 稔は大人しく自白した
- 6件の殺人と1件の未遂があった
- 5人の医師による精神鑑定では4人が責任能力ありと診断した
- 稔は死刑判決に控訴しなかった
このエピローグが冒頭にあり、なぜこうなったのか、このエピローグに至るまでを追っていく流れになります。
視点は3人、犯人の「蒲生稔」、引退した元刑事「樋口」、息子が犯人では?と疑う主婦「蒲生雅子」。
犯人の視点がちゃんとあるので、犯行の動機も手口も行動も全部わかります。
そしてこの犯行シーンがなかなかにエログロい…スプラッター系の映画とか大丈夫な人は怖いもの見たさが調度いい感じで楽しめると思います。
私もそういうの大丈夫なほうなので、この描写があることが作品の魅力の一つだと感じました!ダメな人は本当にダメだと思います。
最終的には社会的に考えさせられるものがあったり、作者のメッセージ的なものをしっかり感じたりと、良い誤読感もありました。
でも子どもとかに薦めるかって言われると、お母さんこれがお気に入りって知られるの後ろめたいかも…。
時系列はバラバラ。例えば「2月・雅子」次の章では「前年10月・稔」次に「1月・樋口」のように数ヶ月のズレがある中でぐちゃぐちゃに進んでいきます。
これが終盤に進むに連れて近くなっていく。数日おきになり、ラスト直前には数分おきになります。そして最初のエピローグへ。
ネタバレあり感想
- 雅子への共感と恐ろしさ
- 殺害シーンの描写、病んだイケメンかっこいい
- 現代日本の家族病理=殺戮にいたる病
雅子への共感と恐ろしさ
一母親として、(うちは息子2人です。)どうしても雅子に共感しながら読み進める感じになってしまいました。
「私の息子が殺人犯?」「私の育てかたが悪かったのか」「家族が壊れてしまう」「夫のせいだ」「他の何よりも家族の幸せが大事だ」「私が作り上げた幸せな家庭を壊すわけにはいかない」
どのセリフ、行動ひとつ取っても全部わかるし、自分に降り掛かったらと思うと恐ろしくてしょうがなかったです。
雅子みたいにセミナーとか行くタイプの教育ママではないけど。
でもきっと、性格もあるかもしれないけど、稔が相談に乗ってくれない、育児に協力してくれないから、雅子は自分じゃ理解できない男性の性についてのセミナーとか行こうと思ったのかな。
そう思うと切ない。私にも男の子の育て方って女の自分じゃわからない、対処できないこともでてくるのかな…とか、いろいろ考えてしまった。
殺害シーンの描写、病んだイケメンかっこいい
ラストシーンで、稔がお父さんの方だと知ったときはビックリももちろんですが、少しだけガッカリしました…。
私は病んだイケメンが好きです。正直、若くてきれいな男の子のほうがテンション上がる。なんか、母性本能がくすぐられる感じがします。
だから、稔が大学生だと思い込んで読んでいたので好みだな〜と思っていたのに、40代のおっさんだったとは。
女の子たちが誘いに乗っちゃうくらいのイケメンであることに変わりはないのだけれど。
キャラクターの雰囲気が、ちょうど少し前に宮部みゆきさんの「模倣犯」をAudibleで聴いたあとだったのもあり、この「殺戮にいたる病の稔」が「模倣犯の栗橋浩美」と重なりました。
2人とも母親を求めて、欲しいようにならなかったから捻くれて…。
「なぜ母親からの愛を満足に受けられなかったのか」というのが、作品のテーマにつながる部分なのかな?殺戮にいたる病。
現代日本の家族病理=殺戮にいたる病
殺戮にいたる病っていうタイトル良いですよね。なんか単純にかっこいいし、テーマをちゃんと表現できてて、この一致してる感が納得に繋がって誤読感が良かったです。
「事故でうっかり」以外の、自ら人を殺してしまう殺人犯って、だいたい生い立ちに何か背景がありますよね。
簡単に表し過ぎて失礼な表現になってたらごめんなさい。稔はマザコン拗らせて子どものまま大人になっちゃったってことですよね?
そういえば余談ですが、岡村孝子の「夢をあきらめないで」は、今後聴こえたらこの作品を連想します。血生臭いホテルの部屋がフラッシュバックすると思うなぁ。
思い入れのある曲じゃなくてよかった。笑
どんでん返しの叙述トリック
「どんでん返しがあるよ!」って知ってても見破れたことってないですね。笑
いやほんとに。今回もどんでん返し系だってわかってたのに、どの方向からどんでんされるのか予想できませんでした。
ラストシーンちょい手前で、ホテルの前で雅子が死体を確認して、「樋口:あんたの息子さんなんだね?」「雅子:何度も頷く」このやり取りで初めて、
あれ、稔って逃げてるよね?でも息子=ホテルで刺された男ってことでいいの?ん???息子2人居たか!?
Kindle版を買って読んでいたので、「息子」とか「家族」とかのキーワードで検索をかけて、子ども3人説(息子2人、稔、愛、もう一人誰か)を匂わせる描写がないかざっと探しましたが完全なる空振り、悪あがき。
家族のことを「彼ら」と読んでいて、そこに父親(夫)も含まれることは再認識したのに、全く疑いませんでした。
でもあとから思えば、小さな違和感はあったのよ。
稔のことを雅子が「稔さん」って呼んでるとか。
→(息子をさん付け…?まぁそういう家もあるか。)
稔視点では部屋に鍵をかけてる日があったのに、信一は鍵かけてない日があったとか。
→(鍵かける癖がある人は毎回かけそうだけどな…今回だけかけ忘れた?まあいっか。)
庭に埋めたゴミ袋を大事に大事にしてるのに、部屋のゴミ箱にあったのってなんだったんだろう…。
→(遡って時系列とか確認したいけど、早く先を読みたい、とりあえずいっか。)
こんな感じでスルーしてました…。まあ、この小さな違和感を真剣にその場その場で考えてたとしても、稔=父親の真実にはたどり着けたとは思わないので意味はないかも。
映像化について
殺戮にいたる病は、まだ映画やドラマなどの映像化はされていません。というか、「映像化できない小説」としてあげられる作品です。
息子だと思ってたら父親のほうだった!っていう叙述トリックが見せ場なのに、顔が見えちゃうと成立しませんもんね。
もしくはそもそも存在感のない父親なのだから、父親の顔をずっと出さずに20代にも40代にも見える俳優さんを使う?不可能ではないにしても、大変そうですね。
あとは、肝心のエログロシーンはどうするのかな〜によっては年齢制限がついたり、テレビで放映できないとか、微妙なことが多いかもしれません。
私のイメージでは、樋口役は堤真一さん佐藤浩市さん豊川悦司さんあたりでしょうか?定年する歳だけど、魅力的なおじちゃんという設定なので。
まとめ
エログロメインのスプラッターで、どんでん返しだ!という2点に期待して読み始めた作品ですが、読んだあと一番心に残ったのは母親と息子の関係性。
家族というつながりの中の父親の役割、性教育や幼い頃のコンプレックスによるトラウマとか、そのへんのほうが気になりました。
どんな生い立ちや背景があるとネクロフィリアになるのか、なるとは限らないので、ネクロフィリアにはどんな生い立ちの人が多いのか?でしょうか。
怖いもの見たさですが、ちょっと気になります。